今回は、CMRRについて解説していきたと思います!
同相信号除去比(CMRR)とは?
差動増幅回路では同相信号除去比(CMRR:Common Mode Rejection Ratio)とは呼ばれるパラメータが重要になります。
なぜなら、差動増幅回路は2つの入力の差分を増幅して、コモン・モード・ノイズである同相信号を除去することが重要だからです。
つまり、差動増幅回路は同相信号除去比が大きければ大きいほど精度の良い回路となります。同相信号除去比(CMRR)は以下の式で表されます。
$$
\begin{eqnarray}
CMRR &=& \frac{ 差動利得 }{ 同相利得 } &=& \frac{ G_{D} }{ G_{C} }
\end{eqnarray}
$$
差動利得の求め方
図はオペアンプを用いた差動増幅回路です。
差動利得はオペアンプ 差動増幅回路の原理、回路を説明で解説した計算式を見てみます。
途中の計算は省略しますが、出力Voutの値は以下のようになります。
$$
\begin{eqnarray}
V_{out} &=& \frac{ R_{2} }{ R_{1} } ( V_{in+} – V_{in-} ) + V_{ref}
\end{eqnarray}
$$
差動利得とはこの式の電圧部分を削除したものになります。つまり差動利得はR1とR2の比率で決まることがわかります。
$$
\begin{eqnarray}
差動利得 &=& G_{D} &=& \frac{ R_{2} }{ R_{1} }
\end{eqnarray}
$$
同相利得の求め方
差動利得同様、差動増幅回路の計算で用いた式を使います。
$$
\begin{eqnarray}
V_{out} &=& \frac{ R_{1} + R_{2} }{ R_{1} } { \frac{ R_{4} }{ R_{3} + R_{4} } ( V_{in+} – V_{ref} ) + V_{ref} } – \frac{ R_{2} }{ R_{1} } V_{in-}
\end{eqnarray}
$$
ここで、Vref=0V、入力電圧Vin+、Vin-を同相信号電圧VCMとすると、
$$
\begin{eqnarray}
V_{out} &=& \frac{ R_{1} + R_{2} }{ R_{1} } { \frac{ R_{4} }{ R_{3} + R_{4} } V_{CM} } – \frac{ R_{2} }{ R_{1} } V_{CM}
\end{eqnarray}
$$
式を整理すると
$$
\begin{eqnarray}
V_{out} &=& \frac{ R_{1} R_{4} – R_{2} R_{3} }{ R_{1} ( R_{3} + R_{4} ) } V_{CM}
\end{eqnarray}
$$
同相利得は電圧部分を削除したものになるので、
$$
\begin{eqnarray}
同相利得 &=& G_{C} &=& \frac{ R_{1} R_{4} – R_{2} R_{3} }{ R_{1} ( R_{3} + R_{4} ) }
\end{eqnarray}
$$
となります。
CMRRの求め方
前述したCMRRの計算式に差動利得、同相利得の値を代入してみます。
$$
\begin{eqnarray}
CMRR &=& \frac{ G_{D} }{ G_{C} } \\
\\
&=& \frac{ \frac{ R_{2} }{ R_{1} } }{ \frac{ R_{1} R_{4} – R_{2} R_{3} }{ R_{1} ( R_{3} + R_{4} ) } } \\
\\
&=& \frac{ R_{2} ( R_{3} + R_{4} ) }{ R_{1} R_{4} – R_{2} R_{3} }
\end{eqnarray}
$$
以上から、分母が0に近づくほど、CMRRが大きい値となります。
つまり、差動増幅回路ではR1とR4、R2とR3の値を同じにすると精度のよい回路ができます。
しかし、実際には抵抗のばらつきがあるので、注意が必要になるでしょう。